沖縄大学 履修ハンドブック
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福祉文化学科―学科理念― 人文学部福祉文化学科が標榜している「福祉文化」は、「福祉」と「文化」の合わさった造語である。「福祉」が意味するのは、(1)衣食住や保健衛生などに関する要求(Basic Needs)、(2)家族、仲間、職業などに関する要求(Social Needs)、(3)遊び、レクリエーション、学習などに関する要求(Cultural Needs)という3つのレベルの要求を、それぞれの人権にもとづき、日常生活の全面的な営みにおいて具現化していくことである。同様に、「文化」が意味するのは、ラテン語のCultura(耕す)に語源があるように、人類がみずからの手で築き上げてきた有形?無形の成果の総体、なかでも哲学?芸術?科学?宗教などの精神的活動とその所産を意味する。つまり「福祉文化」とは、ひとりひとりの人間が民族?地域?社会に固有に伝習されてきた文化的背景を持っていることを尊重しながら、そのような背景をもった個人、誰もが生涯学習を媒介として自己実現を達成するための学問分野であると言え、このような個人の自己実現に寄与しうる社会的条件を整えるための知識?技能を身につけた学生の輩出が本学科の役割である。 そこで本学科の役割を考える上で欠かせないのが、地域の特性に目を向けることである。周知のように、沖縄県は経済的貧困の問題が根深く残っており、これに関連した低学力問題も長く抱えている。その状況を改善するためにも、沖縄県内における質の高い福祉専門職?教員の養成はもちろん、次世代の担い手である中学生?高校生に対する教育環境の提供やその充実が求められている。このような地域の社会的教育課題を認識しつつ、子どもから高齢者まですべてのライフステージにおいて、誰もが心と体の健康を増進させ、幸せを追及し、自己実現できる社会環境の創造に寄与できる人材の育成とともに、学校現場における昨今の多様な問題を抱えた子どもたちに対して福祉文化学とその関連領域における知識や技術を駆使し、それらの状況に応えることができる福祉専門職?教員を養成していくことが本学科に課せられた使命であると同時に、本学科の教育理念?目標である。 一方で、これまで述べてきたような福祉文化の概念の実現だけでは、現在進行形の社会的課題や将来的な問題の根本的な解決にはならず、多くの課題が山積しつつある。これは、従来の福祉理念である“ソーシャル?ウェルフェア(Social welfare:生活困窮者へのサービス)”では、対象と目的を限定した救貧対策的な取り組みだけにとどまり、人間としての幸せを求めて純粋に楽しむ生きがいや文化的活動に向けて多くの人々の自発的行動を促す素養の定着とそれに向けた社会における公的私的とを問わない様々な支援?サービスの充実が、新しい時代の課題としてより重要視されているからである。 そこで、このような新しい時代の課題に対応するために、障がいがあってもなくても当たり前の暮らしをめざすといったような“ノーマライゼーション”の理念を持つ「社会福祉専攻」、及び“ソーシャル?ウェルフェア”をより前進的な転換を図り、身体的?精神的および社会的に健康で文化的な生活を送るための日々のQOL(生活の質)の向上をめざす“ウェル?ビーイング(Well-being:幸福な状態?健康な状態のためのサービス)”の理念を掲げる「健康スポーツ福祉専攻」を福祉文化学科に新たに設置している。福祉文化学科

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