今日の日本社会は、出生率の低下から子どもが少ない、そして平均寿命の延びから高齢者が多い、少子?高齢社会になっています。この少子?高齢社会は、子どもや障がい者(児)、高齢者が共生する社会でもあります。このような共生社会を実現していくためには、子育て支援や障がい者(児)の自立支援、要介護高齢者等の支援が国家的?社会的?地域的な課題になります。 ところで、これまでのわが国の社会福祉、すなわち社会福祉事業法(1951年)時代は、社会権的側面の重視(憲法第25条?生存権「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」)として貧困者や障がい者など特定の人びとの最低生活を保障するといったウェルフェアが主流でした。ナショナル?ミニマム(国家最低生活水準)のレベルで、貧困者や障がい者などは、行政処分(措置)の対象であり、保健?医療?福祉的支援のみの対象者でありました。 しかし、最近の社会福祉、すなわち社会福祉法(2000年)時代は、社会権的側面の重視はもとより自由権的側面が重視され、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」(憲法第13条?個人の尊重や幸福追求権)とその成熟と発展をみせています。そのなかで、身体的?精神的および社会的に良好な状態を目指すウェルビーイングといった社会福祉の理念転換がすすみ、高齢者や障がい者などは、保健?医療?社会福祉サービスを利用する利用者と呼ばれるようになりました。また保健?医療?福祉専門職などと利用者との関係は、対等な関係が強調されるようになりました。かつての保護的?補完的処遇は、協働?自立支援という利用者を中心においたものになってきています。利用者の生活自立や生活の質(QOL)の向上は、保健?医療?福祉的支援のみならずスポーツや余暇生活までをも支援の課題に入れることを意味します。シビル?ミニマム(都市最低生活基準)といった生活者優先の時代を迎えています。 また、今日、重要視されるようになったノーマライゼーションやバリアフリー?ユニバーサルデザインの思想などは、地域社会での利用者の自立生活と生活の質(QOL)の向上を促しています。この利用者の自立生活と生活の質の向上は、「個人の尊重」、「自己実現」、「自己決定」、「権利擁護」等の理念を基調にして成立します。 ところで、私たちが学究する社会福祉学は、政策科学でもありますが、実践科学でもあります。社会福祉の対象である生活問題(生活課題)は、現代社会が生み出す社会的問題と個人的?地域的問題から形成されています。そのため社会福祉は、社会福祉政策?制度の体系と実践?技術の体系からなります。 また、社会福祉の発展?成熟は、政策主体(行政)と利用主体(利用者)、実践主体(福祉専門職?研究者等)の各主体の発展と主体の統合的発展が条件となります。さらに、社会福祉の発展?成熟は、国や地域の歴史や文化に規定される側面をも合わせ持ちます。 これらのことから福祉文化学科社会福祉専攻では、「個人、集団、地域社会およびそれらの社会関係は、その文化的規定や価値観の理解なしには、社会福祉の調査も援助も不可能である」といった国際連合の「社会福祉に関する第3回報告(1958年)」をふまえ、教学の上で日本および沖縄の歴史と文化の理解をすすめます。そして、その上に福祉の問題を広く人間の生活や文化から考察する能力を培い、高度福祉社会に対応できる福祉専門職、具体的には個人?集団?地域の生活問題(生活課題)を明確化でき、その問題?課題解決ができるような実践能力を身につけた「社会福祉士」および「精神保健福祉士」等を養成することを教育理念?目標としています。★登録取消期間★ 前期?通年科目 → 5月末 後期科目 → 11月末89社会福祉専攻の理念
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