特集 まなびを止めない!沖大オンライン講義の取り組み vol3
特集?まなびを止めない!沖大オンライン講義の取り組み?vol3
新型コロナウイルス禍の中『まなびを止めない』ためにと努力を続けたキーパーソンの人たちのお話しから、本学のオンライン講義への取り組みを振り返る特集。
3回目の今日は、沖縄大学が誇るICTスペシャリスト、ICT基盤整備を行っているマルチメディア教育研究センターで13年センター長を勤める八幡幸司先生にお話しを伺いました。
Q沖縄大学がオンライン講義について、県内大学の中でもいち早く実施できたことについてどういったことが強みになったとお考えですか
前回の儀間主査もお話されていましたが、沖縄大学では遠隔講義に使うMoodle、Microsoft Teams(以下Teams), Google Classroom(以下Classroom)を早い時期から導入していました。私自身、2004年からMoodleを利用しはじめ、2005年から「e-Learningシステム実証実験」と題して学内運用を開始しています。マルチメディア教育研究センター(以下マルチ)では、これまでも学内に利用説明会?講習会を実施してきました。Moodleを利用することで学生への資料配布、課題の出題?提出、学生への案内、質問のやりとりを行うことができます。以前から教室だけの授業ではなくて予習や振り返りで活用するというやり方で講義に活用してきました。そして、本学ではMoodle以外にTeams、Classroomも利用ができ、学内でそれらを利用している教員もいました。このようにすでにオンライン講義を行えるベースがあったというが本学が早くにオンライン講義に移行できた理由の一つだと思います。そして大城先生が作成したいわゆる「大城マニュアル」や教員、学生向けポータルサイトを早くに公開し、非常勤講師を含めて、みなさんと教えあう場ができたことがあったことが、強みでしょうか。
今年3月、新型コロナの状況が厳しくなってきた頃に、教員や職員の有志が集い、Teamsに「遠隔授業対策チーム2020(仮称)」(記録によると3/31)を立ち上げました。Teams上で意見交換を頻繁に行うようになり、またメンバーの中に小野副学長がいらっしゃったので、有志の活動から全学的な動きへ、そして正式な体制作りへとスムーズに動けたと思います。チームの敏速な動き、活発な意見交換、情報公表ができたことがやはり一番の強みだと思います。
Q八幡先生が学内だけに留まらず非常勤講師の先生や他大学の先生にもオンライン講義のやり方を広めようと提案されたと伺いました。マルチメディア教育センターの役割から常に努めていることなど教えてください
オンライン授業のやり方を広く情報を公開した方が良いという考え方は、長い間「オープンソースソフトウェア」(以下OSS)を利用してきたからかもしれません。大学のサーバのOSやWebサーバもOSSを利用しています。OSSでは、ソフトウェア(ソースコード)が公開されており、みんなで開発?利用するコミュニティの存在があります。自分たちが便利だとわかったことは他の人にも共有し、みんなで生活をよくしていく。情報を公開していくということを日頃から行っているので、学内だけではなく、多くの教員にも情報提供を行っていくことに繋がったのだと思います。まだ使ったことのない方は、きっかけがないと便利さがわからないでしょうから、まずは使ってみて大変ながらも便利な部分を発見し、それがまた他の人に広がっていくとよいと感じています。マルチは学生や教員、職員にインフラとしての情報基盤を提供の部署です。みんなが大学で学修や研究を続けられるように環境を整備、情報セキュリティー対策を行っていく必要があります。そのための情報収集を日頃から行っています。
Q先生が講義で工夫している点や紹介したいことはありますか
正直、前期は講義に追われた半年でした。これまでは講義は教室での1回勝負でしたが、オンラインだと、もう一度撮りなおそうなど、3回収録を撮りなおしたこともあります。前期のオンライン講義では、スライドに音声を載せて講義資料(動画映像)を作成しました。しかし動画データは容量が大きくなる可能性があります。いわゆる「ギガ問題」を考慮し、データ量を減らす工夫等も行いました。学生の環境が十分に整っていれば、もっと色々なことも可能なのですが、現実はパソコンもっていない学生も多いのが現状です。そのためスマートフォンのみで受講することへの配慮が必要でした。
一方、今年度から小中学校では「GIGAスクール構想」が始まり一人一端末の整備が始まります。また、沖縄県では自宅にWi-Fi環境がない高校生を対象にモバイルルーターを配布する予定となっています。今後ますます教育環境を取り巻くICTの基盤整備は進むこととなるでしょう。ますます家庭でのICT環境も重要になってきます。このあたりは国や県が政策として積極に取り組むことも期待しています。
Qオンライン講義の課題についてはどう感じていますか
私が担当している情報系の科目はPCがないと厳しいのが現状です。例えばMOS(Word、Excel、PowerPointなどの利用スキルを証明する資格、マイクロソフト オフィス スペシャリスト)試験対策講座ではパソコンが必須なので、オンライン講義を行うとなると自宅にパソコンがないと受講できなくなってしまいます。また、現在前期の成績評価をつけている時期ですが、例年に比べて単位を落とす学生が増えています。課題を出していないことが大半の理由ですが、夏休み期間中にそういった学生に対して、何に困っているのか、きちんと聞き取りを行うなどフォローが必要だと感じています。
オンライン講義のメリットとして、学生からは「繰り返し資料が見ることができる」「チャット機能などを使い質問がしやすい」という声も聞こえてきています。また障がいを持つ学生にとっては、スライドに音声や字幕を付けることで情報保証を担保し、障がいの壁がなく学べる環境が整ってきつつあるという状況もあります。オンライン講義の良い部分は継続して行けると良いですね。
Qコロナ禍のなか思うこと、この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。
特に1年次は、はじめての大学生活が味わえないままこのような状況になっているのが非常に残念です。しかし、せっかく学びをとめないようにとオンラインで講義を続けているので、学生のみなさんも、ぜひふんばって学修してもらいたいと思います。
大学は高校までと違ってクラスや担任の先生がいるわけではありません。ゼミの中ではよく、「困ったことがあったらゼミ担当や教務、学生部など、大学にはいろいろなチャンネルがあるから相談するように」と強くよびかけています。少しでも気になることがある場合は、自分で積極的に、そして気軽に相談して欲しいと思います。
次回は最終回、『沖縄大学のオンライン講義の総力特集』と題して遠隔授業プロジェクト代表の小野啓子副学長にお話しをお伺いします。